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最近の気になるニュースと読書

 新型コロナウィルスによる肺炎の感染拡大が続いている。先週、日本でも中国からの旅行者の患者が1人見つかり、その後も同様の患者が3人増えて4人となっていた。今日あらたに日本人1人を含む3人の感染が確認され、日本国内の患者は7人となった。北大の西浦教授(感染症疫学)によると、中国には公表されている数の数倍の患者がいると推測されるらしい。感染者は、アジア、ヨーロッパ、北米でも確認されており、世界的な感染拡大が当分の間続きそうな情勢である。
 小生が昔買ったFieldsのVirologyという英語の教科書(2001年版)のコロナウィルスの項目を読み直してみたが、SARSの発生以前のバージョンであるからだと思うが、風邪または軽い呼吸器感染症の原因となると書かれているだけで、危険なウィルスであるという記述はなかった。けれども、おそらく今回のウィルスが新しく突然変異を起こして生じたということではなく、ヒトに感染したことのない種類のコロナウィルスだったのだろう。世界にはまだ人間が知らないウィルスが数多く存在している。
 エイズの原因ウィルスであるHIV-1はもともとチンパンジーを宿主とするウィルスだったが、20世紀の初めにヒトに感染したとする説が有力である。SARSは2002年にコウモリから、MERSは2012年にラクダからヒトに感染したとされている。今回の新型肺炎ウィルスもSARSと同様にコウモリからであるらしい。もともと一部の動物に感染しているウィルスが人に感染するだけでこれだけの問題を引き起こすのである。感染症の難しさ、恐ろしさへの注意喚起と受け止めるべきであろう。
 こういった新興感染症の感染拡大を防ぐには、それが見つかった初期の段階での封じ込めが最も重要なのだが、武漢市あるいは中国政府の初期対応が適切でなかった。感染拡大防止に何をすべきか、当然のことながら、住民に正確な情報を提供し、それに基づいて人の移動と新たな接触をできるだけ少なくすることである。昨年の12月の時点でそうすべきだったのに、当局が逆のことをしたと多くの専門家が指摘している。SARSの時期に比べて、人の移動が活発になっていて、中国国内にとどまらず、海外に出かける人が何倍にも増えていることも災いした。中国政府は、何千人もの感染者が出てから武漢市全体を封鎖したり、海外への団体旅行を禁止したりしたが、遅きに失した感がある。
 今日の夜のニュースでは、政府が閣議で、今回のウィルスによる肺炎について、国内での感染拡大を防ぐため、感染症法の「指定感染症」と検疫法の「検疫感染症」に指定するための政令を決定したことを報じていた。わが国でもある程度の感染拡大は避けられないと予想されるが、今後、医療関係者だけでなく、国民1人1人が感染防御の意識をもって行動することが肝要である。

 ちょっと心配なニュースを取り上げて不安を煽ってしまった。話題を変えよう。最近読んだ本では、ピーター・J・マクミランの「英語で味わう万葉集」がよかった。日本人が見落としている万葉集の魅力に気づかせてくれる素晴らしい本である。外国人がここまで深く万葉集に入れ込んで理解していることに驚かされた。
 読み終えた後、ふと似たような本を昔読んだことを思い出した。それはリービ英雄の「英語で読む万葉集」という岩波新書である。
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 彼は若いときに万葉集の大部な英語翻訳本を発表し、全米の図書賞を受賞していたのだが、2004年に日本の読者に英訳を交えて万葉集を紹介するために書いたのが「日本語で読む万葉集」で、小生はそれが発売されたときにすぐに買って読んだ記憶がある。この本では、テーマごとにいくつかの有名な作品が取り上げられ、どういうところが優れているのか、そこをどのように英語に訳したかを解説していた。今日この本を読み直してみたが、よく書けていると思った。
 どちらも優れているが、「日本語で読む万葉集」の方はどちらかというと正統派的な解釈で説得力があり、「英語で味わう万葉集」の方は、東歌や防人歌も取り上げられ、また、シャーマニズムやアニミズムの要素が強調されたり、万葉仮名の漢字の言葉遊びについても触れられたりと、より多角的な読み方を教示している点が興味深い。どちらも魅力的で甲乙つけがたく、できれば両方をお読みになることをお勧めする。

by t0hori | 2020-01-28 23:58 | 随想 | Comments(0)  

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