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自分の病気のこと

 自分の体調のことをブログに書くのは、下手をするとプライバシーの押しつけになりかねない。しかし、自分は医師なので一般の人よりは自分の身体を客観的に見ることができるはずである。また、自分の事例が同じような症状の人に参考になるかもしれない。そう考えて、迷ったけれど、先週あったことを書くことにした。
 半年くらい前から、排尿に時間がかかるようになっていて、それが次第に増悪し、ひどいときには、5分くらいトイレの前に立つことも稀でなくなった。この症状と年齢、そして健診でのPSAの値から、前立腺肥大の可能性が高いと思ったけれど、日常生活に支障が出るほどではなく、仕事を理由に病院を受診せずにいた。しかし、先月くらいから、夜間の排尿の回数が増えて、さすがにこのままではいけないと感じるようになった。
 患者として病院を受診するのは何年ぶりだろうか。自分が外来診療をしているK大学病院の泌尿器科を受診するには、どうすればよいか。大学病院のような特定機能病院をいきなり受診すると課徴金を取られると聞いていたが、5,400円もすると知って驚いた。それを払わずに済ませるには、近くの開業医を受診して紹介状を書いてもらう必要がある。小生は、義理の兄にそれを頼み、授業のない水曜日の午前中の受診の予約もしてもらった。
 当日は、8時半に病院の駐車場に車を停め、外来の初診受付に受診票と保険証と紹介状を提出して受け付けを済ませた。その手続きが済むと呼び出し用PHS受信機を渡され、その後は受信機の指示に従えばよいのである。画面を見ると、3階の泌尿器科の外来へ行くように指示が出ていた。泌尿器科の受付で問診票を渡され、そこに記入して待つように言われた。しばらくして、新患担当医に呼ばれて診察室に入った。症状や既往歴などを聞かれた後、尿流測定の検査のため、尿意を催したら処置室へ行くように言われた。
 困ったことに家を出る前に排尿を済ませてきたので、まったく尿意がなかった。尿を出すために、地下のローソンでカフェラテを飲み、それでも足りないと思って、自販機でペットボトルのウーロン茶を買って飲んだ。そして1時間ほどしてようやく、尿流量測定の検査を受けることができた。どういう検査かというと、通常のトイレと同じで、男性の場合は立位でもよいし、坐位でもよいが、要するにトイレに尿を出すだけである。あとは、トイレ一体型の装置が水位の上昇を検知して経時的に排尿量を計測してくれるのである。
 その後、エコーで残尿量を測定し、しばらく待たされた後、さきほどの医師により、腹部エコーと直腸診の検査を受けた。通常は、初診で血液検査も行うものだと思うが、今回それは省略された。そして、11時頃に診察室に呼ばれて、検査結果の説明を聞かされ、前立腺肥大症と診断され、予想通りαブロッカーを処方された。会計掛に書類を提出し、PHS受信機を所定の機器に挿入して、診療費を支払った。それから、病院の外の薬局へ行き、処方箋の薬を受け取り、代金を支払った。病院を出るとき、駐車場代が一律千円と高額なのにも驚いた。以前は受診または見舞いに来たことを証明できれば無料になったのだが、昨年から料金体系が変わったらしい。
 今回、大学病院を患者として受診して、いろいろと気づくことがあった。当たり前のことだが、大した検査を受けなくてもそれぞれの段階で待ち時間があって、どんどん時間が過ぎていく。そして、健康保険が使えても駐車場代、薬代を含めてすべてを加算すると結構な額になる。それでも、ようやく診断がついて、治療方針が決まったのはよかった。その日から、上記のαブロッカー1錠を朝1回服用しているだけだが、何となく尿が出やすくなったような気がする。

 今週の金曜日から大阪でG20が開催される。これだけ多くの国の首脳がわが国に集まるのはこれまで例がなかった。もちろん実質的にこれによって何かが大きく変わるということはないのだろうが、変わるきっかけが生まれるかもしれない。政治とか国際情勢に関しては全くの素人なだけに、この機会に少しくらい関心をもって会議を見守りたいと思っている。その際に、各国が議論すべき課題を考える上で、格好の副読本があるので紹介したい。
 G20とは直接関係がないのだけれど、先月ジャレド・ダイアモンドの新しい著書、”Upheaval, Turning Points for Nations in Crisis”が 発売された。彼の著書では、”Guns, Germs, and Steel”「銃、病原菌、鉄」を最初に読んだときの衝撃を忘れることができない。歴史、地理、人類学、地学、民俗学などの最新の知識が、人類史上のある問題の解明のために動員され、活用されているのに圧倒された。その後、”Collapse”「文明崩壊」や”The Third Chimpanzee”「人間はどこまでチンパンジーか?」など他の作品も読んだが、「銃、病原菌、鉄」ほどの衝撃はなかった。
 先週、たまたま、アマゾンに上記新作の比較的きれいな古書(1,045円)が売りに出されていたので、先日それを購入して、ざっと飛ばし読みをした(下の写真)。日本に関する章が2つあって、それ以外にも日本のことはいろいろなところで比較のために出てくる。日本への関心の高さをうかがわせるのだが、書かれていることは、常識的で特に目新しくはなかった。日本の将来の課題についての章でも、中国と韓国との関係の理解において若干異論がなくはないが、大筋で彼の指摘は的を射ているように思った。
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 この作品は、「銃、病原菌、鉄」のような傑作とは言いがたいけれど、とにかく彼の知識の範囲と深さが尋常ではないので、英語の原書でも読み出すと止められなくなる。米国と世界の将来についてかなり悲観的なことが書かれているが、それも含めて、またタイミング的にもG20の格好の副読本であるに違いない。

by t0hori | 2019-06-24 23:44 | 随想 | Comments(0)  

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