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雨が降る前の散歩

 忙しかった2月が過ぎ、いつの間にか3月になっていた。ということで、まず、ブラッド・オレンジの現在の状態を報告しておこう。昨年の冬、屋外で寒気に晒したために、タロッコを失い、モロも主幹を枯らせてしまったことはこのブログに書いた。そして予告したように、今年の冬はこれまで一度も屋外に出さず、窓ガラスの内側の縁側に置いたままにしている。そこまですれば当然かもしれないが、常緑樹らしく緑の葉を残している。というより、最近では、むしろ葉を増やして成長しているのが分かる。それでも油断はできない。まだ寒い日があるだろうから、外に出すのは4月になってからにするつもりである。
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 京都では今日の午後から雨が降るという予報が出ていた。1日中家にいると気が滅入るし、運動不足は健康にもよくないので、午前中に散歩に出かけることにした。9時半に家を出て北山通りから松ヶ崎通りを右折し、高木町の交差点を渡ってそのまま細い道を直進した。何度か小路が行き止まりになると右折を繰り返し、なおも南に向かって歩いているうちに、下鴨中学の門の前に出た。
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 ここは小生の母校であり、十代の頃いつもこの門を通って登校したことを思い出した。そこから学校の塀に沿って右の方向に進むと、今度は糺の森を囲む別の塀が見えてくる。物静かな裏道という雰囲気である。しばらく行くと右側を流れる川に橋がかかっていて、その先に糺の森が見えた。最初から意図したわけではないが、ここまで来たら下鴨神社にお参りして帰ろうと思った。
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 糺の森の広場では、「森の手作り市」が開かれ、多くの露天が並んでいた。これだけ多くの人が工芸品を作って出品し、それを見たり買ったりする人が相当数いることに驚きを禁じ得なかった。
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 いくつかの露天を見てからUターンして下鴨神社へ行った。御手洗所で手を洗ってから境内に入って参拝した。3月3日は桃の節句で、神社では下の写真のように、流し雛が行われようとしていた。この催しでは、十二単のお雛さま・衣冠装束のお内裏さま・神職などが和紙人形を藁で編んだ桟俵に乗せ、境内末社・御手洗社の前を流れる御手洗川に流し、子どもの無病息災を祈願するそうである。ちょうどそれが始まるところで多くの見物客が詰めかけていた。小生は、自分に女の子がいないということもあるが、雨が降ってきそうだったので、長居をせず、神社を出て帰途に着いた。
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 最近読んだ本では、柄谷行人の「世界史の実験」が面白かった。帯に「『世界史の構造』後の新たな到達点」と書かれているが、それほどの内容ではない。けれども、柳田国男のやろうとしたことが一般的な民俗学という範疇を超えた「歴史の実験」であり、そのために東北あるいは沖縄の方言や風習から歴史の古層を掘り起こし、人間の真実に迫ろうとしたのだと言われてみると、そのように思えてくるから不思議である。柄谷は、もう80歳近くなっているのに彼特有の視点のユニークさ、読みの鋭さ、説得力のある語り方は少しも衰えていない。久しぶりに彼の本を読んでそのことが嬉しかった。
 もう1冊、感心して読んだのが、同じく岩波新書の市川裕著「ユダヤ人とユダヤ教」である。この本も読むほどに惹きつけられ、目から鱗が落ちるような解説に出会うことが少なくなかった。例えば、ユダヤ人社会が中世のイスラム世界の中でイスラムとともに繁栄したことなどである。昨年、岩波文庫のウェーバーの「古代ユダヤ教」3冊を通読したときに十分消化できなかった箇所についても考えるヒントを与えられたように思った。過去に読んだ本の内容について、別の本を読んで思いあたるところが見つかり、再読したり、比較して味読したりするのが、読書の本当の醍醐味ではないだろうか。

by t0hori | 2019-03-03 18:13 | 日誌 | Comments(0)  

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