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二度の夜桜

 4月になったので、まずは、今朝のブラッド・オレンジの写真をアップしておく。状態が比較的よいのは大きい方のモロだけである。茎の一部が黄色に変色し、一部の葉が枯れているものの、よく見ると葉の新芽がところどころに顔を覗かせている。小さい方のモロは、全く生きている徴候がなく、残念だが、いずれ処分することになるだろう。タロッコも、枯れているように見える。それでも、こちらは、茎が一部緑色で完全に枯れてはいないことを示していて、根に近いところから新芽のようなものが生え出ている。ただ、生きているとしても全く成長していない。昨年の夏と比較すると上部の茎が枯れて背丈が半分くらいになってしまった。タロッコは植えてからもうすぐ3年になるのだが、この程度にしか育てることができなかった。ということは、この品種を温室なしで年間を通じて京都で栽培するのは難しいと認めざるをえない。
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 前回に書いたように、今年の桜は開花が早かったけれどその後の天候に恵まれ、見ごろの状態が約1週間続いた。こんな年は相当に珍しい。あちこちから美しい桜の便りを聞くにつけ、花見をせずにこのまま過ごすと、後々まで後悔しそうに思われた。これまで夜桜などというものにはあまり縁がなかったのだが、後悔したくないという気持ちから一念発起して、29日(木)に米国人青年のDCさんと一緒に大津の琵琶湖疎水と三井寺へ夜桜を見にいくことに決めた。彼は、同じ大学の別の学部の事務室で働いていて、3年半前にたまたまベトナムへの出張で一緒になって以来の付き合いである。日本語が上手で、小生とも日本語で話をしてくれる。
 今回の花見は小生から提案し、彼が付いてきてくれたのだけれど、実際に行ってみると、夜桜の夜間照明がまだ始まっておらず、暗い夜道で月明かりと通常の街灯だけのちょっと変則的な夜桜になってしまった。桜はほぼ満開だったし、暗い夜空を背景に桜を眺めるのも一興ではあったが、決して楽しい理想的な夜桜だったとは言えない。結果として、DCさんにとんでもない花見に付き合わせてしまったことを申し訳なく思う。花見の後、近くの「ゆう介」という割烹の店で2人で夕食を食べながら、大学のこと、DCさんの私生活のこと、世界情勢のことなど、さまざまな話題で盛り上がったのはよかった。
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 この夜桜は本当の意味の夜桜ではないという忸怩たる思いを抱いていた。後になって後悔しないために、昨日もう一度花見に行くことを思い立った。今度は夕方5時半頃から妻と2人で円山公園へ向かった。四条通りの人出は尋常ではなく、行き交う人の半数以上は外国人のようだった。八坂神社の西楼門を通り、露店の建ち並ぶ通路の人混みをかき分けて進み、目当てにしていた祇園しだれ桜にたどり着いた。小生がここに夜桜を見に来たのはおそらく30年ぶりくらいだろうか。以前の桜の姿の記憶ははっきりしないが、もう少し枝先までまんべんなく花があったように記憶する。すこし枝振りもいびつになってはいるが、それでも大きくて壮麗であることに変わりない。この辺り集まっている人たちの祝祭的な雰囲気というか、笑顔と熱気も桜に負けていなかった。
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 われわれは、それから長楽館の前を通り、大雲院祇園閣の尖塔とその下の桜を過ぎ、高台寺の前に出た。このあたりは、人は多かったけれど露店もなく落ち着いた雰囲気の中に、夕暮れの桜を眺めることができた。
 この日は、右手の路地にある洋食の店「みしな」で夕食を予約していた。店に入って、偶然、妻の知人とその家族がおられて挨拶を交わした。われわれは、カウンターの中程の席に座り、フライ定食と白ワインのハーフボトルを注文した。クラッカーとチーズの付きだし、濃厚なポタージュスープ、そして、海老フライとカニクリームコロッケにはサラダが添えられていた。料理はどれも美味だった。とくに海老フライは海老が大きく、パン粉の衣が細かく繊細だった。そして最後にご飯と漬け物とちりめんじゃこと茎若布佃煮とお茶が1つのお盆に乗せて出された。小生はご飯の残りをお茶漬けにした。
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 店の方の話によると、今は三代目で、初代は祇園末松町にあった「壺坂」という店で、谷崎潤一郎のお気に入りだったらしい。そして、二代目が先代の娘婿で、現在はおそらくその息子さんがコックをしているということだろう。食事を終えて外に出ると、完全に夜の帳が落ちていた。もと来た道を引き返し、高台寺の夜桜を眺めながら円山公園の方向に歩いた。円山公園の熱気は夕方よりさらにヒートアップしていた。夜に浮かび上がる祇園しだれ桜は見事だったし、桜の下のシートや桟敷席での宴会はたけなわのようだった。ちょっと現実離れのした風景が続き、夢を見ているような気分になった。それから、八坂神社の拝殿でお参りをして、楼門から階段を下り、また、人混みの中を四条河原町のバス亭まで歩いた。
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 1週間に2度までも、夜桜を見物できて、何となく満ち足りた気分になっている。今から振り返ると、琵琶湖疎水では、暗闇の中に満開の桜を愛でるという経験は滅多にできるものではなく、ユニークさが際だっていた。暗と明、静と騒、対象的な2回の花見を終えて、これでようやく、やり残し感がない状態で、新学期を迎えられそうである。

by t0hori | 2018-04-01 23:59 | 日誌 | Comments(0)  

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