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ライバル同士の友情について

 数日前から急に暖かくなった。とくに日中はコートやジャンパーなどの上着がいらないくらいである。日が長くなり、6時半頃まで外はほのかに明るい。もう少しすれば、夕方から散歩に出かけたくなるだろう。これから寒暖の変化はあっても日を追うごとに春らしくなっていく。そろそろ梅の花の便りが届きそうな時期だが、今年はずっと気温が低かったから遅れているらしい。和歌山でもまだ満開でないとすれば、京都の北野天満宮の梅が満開になるにはまだしばらくかかりそうである。
 大学では最後まで残っていたM2院生と学部4回生も、すべての課程を終えて後は卒業式を待つだけとなった。教員にとってもこれからの1ヶ月間は貴重な心身の充電期間である。小生にとっては散歩と読書の時間が増えるのが嬉しい。とは言え、入試関連の会議などには出なければならず、完全に雑用がなくなるわけではない。

 日曜日の夜に平昌オリンピックが閉幕した。今回のオリンピックは、小生も夜遅い時間にテレビで中継を見たり、ニュースのハイライトシーンを見たりして、人並みに感動した。オリンピックが終わっても、テレビでは、日本人選手の帰国や記者会見の模様とともにメダリストたちの活躍の場面を繰り返し放送している。素晴らしいシーンばかりで、どれが一番印象に強く残ったかは一概に言えない。その中で、ライバルと目された選手同士の友情のシーンは、最もオリンピックらしいと思った。
 スピードスケート女子500メートルの決勝で、小平奈緒選手が36秒台のオリンピックレコードを出した後、3連覇を狙う李相花(イ・サンファ)選手が最後に滑走してそれを越えられず、銀メダルに終わった。順位が確定した直後、涙を流す李選手を、小平選手が抱きしめて、いっしょにリンクを周回した場面は清々しかった。オリンピックには、国威発揚の要素があり、それも無碍に否定できないが、お互いに全力を出し切った後の国境を越えた友情は美しいとしか言いようがない。李選手の快挙を心待ちにしていた韓国ファンも、小平の優しさに触れて二人に拍手喝采した。
 羽生結弦選手が男子のフィギュアスケートの決勝でフェルナンデス選手と最後に抱き合ったシーンも感動的だった。二人は、同じブライアン・オーサーコーチの指導を受ける同僚であり、よきライバルの関係にあった。Webニュースによれば、今日羽生選手が外国特派員協会の記者会見で、スペインの記者からフェルナンデス選手のことを尋ねられて、次のように語った。
「彼が僕のことを日本のメディアに語っているのは知ってますけど、実は自分自身、スペインのメディアの方に、ハビエルについて聞かれるのをすごく待ってました」
「彼がいたからこそ、僕はカナダに行って練習をするという選択をしました」
「彼はとても優しい人です。優しすぎて、ちょっと競技には向いていないんじゃないかというほど優しいです」
「彼はソチオリンピックのときに、メダルを取ることはできなかったんですけど、そのことを凄く悔しがっていたのを知っていますし、一緒に練習していて、オリンピックのときだけは凄く無口になっていた」
「僕は金メダルを取った時に泣いてしまったんですけど、涙のスイッチが入ったのは、彼のメダルが確定したからだというのもあります」
「やっぱりオリンピックでメダルを取りたいという気持ちが強いんだろうなと思っていたからこそ、彼のメダルは僕も本当に誇らしかったですし、凄く嬉しかったです」
「これから一緒に試合ができるかはわかりませんけど、僕が6年間一緒に練習をしてきて、そしてお互い高め合いながら試合ができて本当に幸せだった。彼がいなくちゃ僕はこの席にメダルを持ってこれなかった」
 羽生選手の金メダルが決まったとき、2人は抱き合った。羽生選手は泣きながらフェルナンデス選手に「あなたにチャンピオンになってほしかった」と語ると、フェルナンデス選手は「王者は一人だよ」と語りこれが最後の五輪だと告げた。
 小生は、何年も前から、羽生選手だけでなく、フェルナンデス選手のファンでもあるのだが、この話を聞いて何と優しい人なのだろうと感心した。こういうことがあるから、いろいろ批判はあってもオリンピックは素晴らしい。

by t0hori | 2018-02-27 23:59 | 随想 | Comments(0)  

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