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憲法改正と日韓首脳会談

 先ほど見たWebの毎日新聞ニュースで、自民党の高村正彦副総裁の憲法改正についての発言を次のように報じていた。高村氏は、東京都内で講演し、憲法9条改正を巡る党内議論について「自民党大会までに一本化できればいい」と述べ、3月25日の党大会までに党としての条文案をまとめる意向を表明した。その上で、安倍晋三首相が提起した第1項(戦争放棄)、第2項(戦力不保持)を維持し自衛隊を明記する案が「抑制的で実現可能」との認識を改めて示した。 その理由として、石破茂元幹事長らが掲げる2項削除案では、「公明党が乗ってこない。国民投票(での過半数の賛成)が非常に難しい」と指摘し、自民党議員の有志が目指す「自衛権」明記に対しては、「(集団的自衛権の限定行使を認めた安全保障関連法の)反対派にリターンマッチさせるようなことを仕掛けるのは得策ではない」とけん制した。
 以前このブログで、小生は、現行憲法は現実とあまりにも解離していて、フィクションに近いと書いたことがある。この憲法は、米軍の占領下に数人の米国人によって原案が作られ、ほぼそれをなぞるようにして起草されたものである。そのことは確かなのだが、当時の戦争で疲弊し平和な生活を渇望した国民の感情に一致していたのと、それがあったおかげで世界各地で勃発していた米ソの代理戦争に巻き込まれずに済んだという点では、立派に歴史的な役割を果たしたと言える。しかし、戦後70年以上が経過し、東西冷戦が終息するとともに、世界情勢が流動化している状況において、これまで通りでよいかどうかは、国民的議論が必要であろう。たとえば、近隣の独裁国家が核兵器開発を続け、周辺国への挑発を繰り返していることに対して、今の憲法の理想主義だけでは不十分なことは明らかである。そして、現実に自衛隊が存在し、相当な戦力をもっていることは、9条第2項と明らかに矛盾している。
 小生は個人的には、日本が真の独立国家となるために、この第2項を削除すべきだという考えなのだが、そのような立場の改正案が国民投票で可決される可能性は低いだろう。だから、今回の高村氏の発言は、そしてそれは安倍首相の考え方でもあるが、姑息だけれども老獪だと言わざるをえない。
 安倍首相が平昌オリンピックの開会式に出席するべきかどうかについて自民党内で意見が分かれていたが、本日、最終的に出席する方向で調整することになったらしい。このことについて、毎日新聞の記事は次のように伝えている。安倍晋三首相は24日、2月9日に行われる韓国・平昌冬季五輪の開会式に出席する意向を表明した。訪韓時に文在寅大統領と会談する方向で、慰安婦問題に関する2015年の日韓合意の着実な履行を直接求める考えだ。首相は24日の衆院本会議で、文氏との会談について「北朝鮮に核・ミサイル計画を放棄させるため、圧力を最大限まで高めていく方針からぶれてはならないことを直接伝えたい」と訴えた。また、「慰安婦合意について日本政府の考え方を明確に伝えていきたい。韓国側に約束を誠実に履行していくよう働きかけていく」と語った。首脳会談では、合意は「最終的かつ不可逆的」だと指摘し、履行を求める模様だ。また、記者団に「2020年東京五輪がある。同じアジアで開催される平昌五輪の開幕式に行き、選手団を激励したい」と語った。
 日本側がぎりぎりまで譲歩して成立した慰安婦問題の日韓合意を無効化するような文政権の一方的な評価について、自民党内には反発する人たちが少なくない。そういう人たちの多くは、安倍首相がもう少し毅然とした態度を取るべきで、オリンピックの開会式を欠席すべきだと主張していた。小生は、そのような意見を心情的には理解できるし、もし相手が隣国でなければ、そうすべきだと思っただろう。けれども、日韓関係の重要性、日本人選手への応援、2020年の東京オリンピック開催のことを考えれば、ここはじっと堪え忍んで、積極的に出向いて文大統領と会談することには意味がある。安倍首相の判断は、大局的な立場に立って、切ってもきれない間柄である両国の将来のために、感情的な行動を抑えた大人の対応であると言える。
 こうして見てくると、安倍首相が、パフォーマンスより実利の方を選んでいることが分かる。いずれの問題についても、どちらの選択が正しいかは一概には言えないけれど、安倍首相の態度は一貫している。一言でいうと忍従である。安倍氏は、いつの間に、かつてのタカ派のイメージを払拭し、ソフトな調整型の政治家になってしまったのだろうか。それがプロの政治家というものだろうか。保守派からの批判を受けながらもそういう決断をしたことを個人的には評価するが、訪韓して本当に卑屈にならずに言うべきことを言うかどうかを注視したいと思う。

by t0hori | 2018-01-24 23:59 | 随想 | Comments(0)  

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