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久しぶりの上賀茂神社訪問

 今の時期、大学は結構忙しい。すでに後期の講義や実験実習などの授業が終了し、来週の初めには定期試験も終了するのだが、2月にかけて大学院生の修士論文や4回生の卒業論文の指導、定期試験および大学入学試験の採点業務などが残っている。しかし、今日は、せっかくの日曜日である。仕事は明日から再開することにして、家で音楽を聴いたり、散歩に出かけたりした。
 家の近所には、手打ちそばの店が何軒かある。そのうちの一軒、植物園の向かいのじん六という店に初めて行ってざるそばを食べた。十割そばで、蕎麦の香りはよいのだが、麵が太めなのが、ちょっと好みでなかった。そばを食べながら、ふと上賀茂神社へ参拝に行くことを思い立った。2週間前、寒波が到来しようとしていたときに上賀茂神社の前まで行ったが、そのときは雪が降ってきたので神社の中まで入らずに引き返した。だから、今回は中に入って参拝したかった。じん六から1キロちょっとの道のりであることを確認し、人通りのすくない裏道を選んで神社まで歩いた。
 子供の頃、下鴨神社ほどではないが、ときどき両親に連れられて上賀茂神社へ来たことを思い出す。その頃は、参道の両側の広い芝生でボール遊びなどをしたものである。今なら許されないだろうが、当時は遊んでいて注意された記憶がない。今日、その芝生は黒く焼かれていて、立ち入り禁止の立て札が立っていた。家に帰ってから調べると、今月25日に害虫や雑草の駆除を目的に芝焼きが行われたらしい。何度もこの神社へ来ているが、黒く焼け焦げた芝生を見るのは初めてだった。
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 2つ目の鳥居の手前の目立つ場所に厩舎があって、白馬が飼われている。この白馬は神馬であり、これを見ると1年の邪気を祓って健康に過ごせると言われている。家に帰ってから知ったのだが、この馬は、戦後7代目の神山号で、以前はJRAのメダイヨンという名の競走馬だったのを、引退後に譲り受けたらしい。境内に入り、本殿の方へ向かう。初詣での混雑はもはやなく、日曜日なのに参詣客は少なかった。2年前の式年遷宮の追加工事なのだろうか、一部の建物は工事用のシートで覆われていた。本殿の前の石段を上がってお参りを済ませた。
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 トランプが大統領に就任してから、1週間の間に矢継ぎ早に大統領令を連発し、国内外に波紋を広げている。独善的かつ強権的な政治姿勢が目立っていて、昨日は、難民の受け入れ停止と特定のイスラム教国からの入国の一時停止を命じる大統領令を出した。日経の記事から引用すると、「今回の大統領令は、入国審査を厳格化するまでシリア難民の受け入れを停止し、その他の国の難民も120日間入国させない内容だった。すなわち、イラクやイランなどイスラム教国を念頭にした『テロ懸念国』7カ国の一般市民のビザ発給も90日間停止し、入国できなくする。世界各国で米国行きの便への搭乗を拒否されたり、送り返されたりした例が相次いでいる。ロイター通信によると、エジプトのカイロで、イラク人4人とイエメン人1人がエジプト航空のニューヨーク行きの便への搭乗を拒まれた。カナダのウエストジェット航空では米国行きの便に乗っていた対象国の乗客1人を送り返した。」
 Bloombergの記事によれば、下の図のように、イスラム教国であっても、トランプ自身のビジネスの取引がある、つまり、ホテルやゴルフ場やその他の事業があるか計画している国々は、今回の入国禁止措置から除かれている(黄色の国々)。つまり、トランプは、外交・国政に自分の利害を持ち込んでいるのである。一国の指導者がこのような利益相反に該当するようなことをしてよいのだろうか。米国の主要メディアおよび欧米のメディアは、この大統領令を採り上げてトランプ批判を強めている。けれども、トランプ政権の閣僚や補佐官は、誰も反対しない。それどころか、この大統領令は、国土安全保障省の原案では、米国のグリーンカードをもっている当該国の人たちには適応されないことになっていたのを、上級顧問のバノンらが、それらの人たちにも適応するように修正したとCNNが報じている。
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 一国のリーダーが替わるだけで、こんなにも世界全体が混乱し、先行き不安な気持ちにさせられるのかと、改めて米国の影響力の大きさに感心してしまう。しかし、考えてみれば、これらの政策は、大統領選の選挙運動中にトランプが声高に叫んでいた公約なのであり、米国民はそれを承知で、トランプを選出したのだ。トランプはこれまで言ってきたことを実行に移そうとしているに過ぎない。米国民は、今頃になって慌てても仕方がないのであり、冷静にこれからトランプとどう付き合っていくかを考えるべきである。
 われわれ他国人にはどうすることもできない。日本では、今のところ実害は生じていないということもあるが、シリアからの難民を多く受け入れているヨーロッパ諸国と違って、対岸の火事というか、あまり差し迫った危機とは受け止められていない。しかし、問題が、移民や入国ではなく、2国間の通商問題となると話は別である。トランプは、選挙中から、中国、メキシコ、日本の3カ国を、米国内の雇用を破壊した国として繰り返し批判してきた。だから,近いうちに、多額の貿易赤字を減らすために、円高誘導や高い関税といった手段に訴えてくるかもしれない。2月10日に予定されている安倍首相との会談で、無理難題を突き付けられる可能性がある。
 トランプが政治の舞台に登場してから、post-truthという単語がよく使われるようになった。これは、「客観的な事実や真実が重視されない時代」を意味する形容詞で、英オックスフォード大出版局が、昨年注目を集めた英単語として選んだのだった。post-truthの例として、米大統領選の運動期間中に「オバマ大統領が過激派組織『イスラム国』をつくった」といった主張がネットで出回ったり、英国のEU離脱派が、「英国はEUに毎週3億5千万ポンド拠出している」などと事実に反するスローガンを使ったりしたことが挙げられる。そして、最近では、大統領府の発表で、就任式への参加者が史上最も多かったと事実と異なる主張を平気で行って、post-truthを実践している。また、大統領顧問の コンウェイ がNBCの報道番組Meet the Press でalternative factsという言葉を使ったことも話題となった。トランプ政権の人たちは、何らかの政治的な目的のためには真実を曲げてもかまわない、あるいは、人々に何が真実なのか分からなくしてもよいと考えているようだ。
 これは要するに昔からある政治的プロパガンダの一種と理解してよいのだろう。以前の共産党政権の国家が組織的に行っていたが、現在でも、中国や北朝鮮や、場合によっては韓国において、post-truthは、普通のことなのかもしれない。しかし、それにしても、民主主義のお手本のように思われていた米国の政府が事実の歪曲と批判されても仕方がないような発表をして恥じない時代になったことは驚きである。今後は、各国の国民が、騙されないように、真実に近づくための努力をしなければならないのだろう。住みにくい世の中になったものである。

by t0hori | 2017-01-29 23:20 | 随想 | Comments(0)  

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